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慰謝料の赤本基準について
1 赤本とは
赤本とは,財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という書籍の略称です。
表紙が赤いことから,「赤本」や「赤い本」と呼ばれています。
上巻の基準編と下巻の講演録編とがセットとなっており,毎年2月に改訂版が発行されています。
赤本は,東京地方裁判所における裁判実務に基づき,治療費,交通費,休業損害,後遺症・死亡による逸失利益,傷害・後遺症・死亡による慰謝料,物損等,損害項目ごとに算定基準を解説しています。
また,過失割合,損益相殺,減額事由等,損害額を算定する上で考慮されるべき事項についても基本的な考え方について論じています。
東京地方裁判所及びその周辺の裁判所では,通常,赤本の算定基準を用いて計算がなされています。
赤本の下巻に掲載されている裁判官等の講演録は,交通事故における損害賠償に関するさまざまな課題について論じられており,講演録が裁判実務へ与える影響力は大きいといえるでしょう。
2 慰謝料の赤本基準
交通事故の被害者は,通常,入通院治療が終了したり,後遺障害等級が認定されたりすると,加害者側の保険会社から損害賠償額の提示を受けます。
損害賠償額には慰謝料の提示も含まれますが,慰謝料の算定基準には,自賠責基準,任意保険会社基準,裁判基準があるといわれています。
自賠責基準は,自動車損害賠償補償法に基づいて定められた基準です。
任意保険会社基準は,任意保険会社が用いる内部基準のことです。
任意保険会社は,独自の内部基準に基づいて慰謝料を算定して,被害者の方に提示します。
裁判基準とは,交通事故事件を扱う裁判実務において参照されている赤本などに記載された基準のことです。
慰謝料の金額は,通常,自賠責基準<任意保険会社基準<裁判基準,の順で高くなります。
多くの被害者側の弁護士は,交渉する際,裁判基準を用いて慰謝料を算定します。
保険会社は,裁判になれば裁判基準が用いられること,弁護士が裁判基準で算定することを知っています。
そのため,弁護士が示談交渉する場合,保険会社も裁判基準を考慮して交渉に応じ,当初の慰謝料の提示額より増額し得ることが多いです。