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慰謝料について,人身傷害保険から支払われる場合と,相手方の対人賠償保険から支払われる場合の違い
1 人身傷害保険とは
交通事故における損害は,大きく4つに分けられます。
①自分の車両損害,②自分の身体の損害,③相手の車両損害,④相手の身体の損害の4つです。
「対人・対物無制限」といった保険の内容を聞いたことがある方もいるかと思いますが,これはご自身が加入された保険会社の方が,相手方の損害である③,④について,上限額なく対応する,ということを意味します。
人身傷害保険というのは,上記の区分でいえば②の,ご自身の御怪我について,ご自身が加入されている保険会社の方で対応してもらうものです。
2 人身傷害保険加入の意味
こちらが無過失の事故,過失の小さい事故の場合,多くの事案では加害者ないしその勤務先が加入している保険会社が窓口となり,治療費や慰謝料などの賠償について対応します。
しかし,加害者が任意保険に加入していない場合や,こちらが加害者になってしまって怪我をしてしまった場合などは,治療費は一時的にせよ自己負担せざるを得なくなってしまいます。
ここで人身傷害保険に加入していれば,治療費や慰謝料などの保険金を受け取ることができます。
また,過失割合のある事故等では,過失相殺分を人身傷害保険で賄ってもらえることもあります。
3 慰謝料に関する人身傷害保険と対人賠償との違い
上記のように,人身傷害保険による補てんが期待できる場合がありますが,補てんには限度があります。
というのも,人身傷害保険は,怪我をした人と人身傷害保険の保険会社との契約によってその額が決まっているため,基本的に交渉して増えたりするものではありません。
また,一般論としては,慰謝料の基準は加害者から受ける賠償としての慰謝料基準よりも低額に設定されていることが多いです。
そのため,対人賠償としての慰謝料との差額が生じる場合があり,別途相手方と交渉が必要になる場合があります。
4 人身傷害保険と対人賠償との違いを踏まえて
人身傷害保険が利用でき,かつ過失割合が問題となる案件の場合,慰謝料を含めた総賠償額の計算方法等はやや複雑になります。
他方,人身傷害保険で一部慰謝料等を受け取れる場合でも,適切な賠償を受けるためには相手方との追加交渉が必要な場合があります。
交通事故で受傷後,人身傷害保険を利用して治療を終了した場合でも,追加で相手方に請求する余地があるのかなどについて,一度弁護士に相談されることをおすすめします。